アトリエ公開の覚書
日時 2014年 2月1日 2日 午前10時より 午後4時まで
公開の経緯
朝の雪かきの時に近所の方から「作品を一度見せてください」と声をかけられたこと。
アメリカ人の友人の版画家がオープン・アトリエと称して、定期的に自宅アトリエを解放している事を昔聞いていて、いつか私もやりたいと思っていたこと。
外からこの山間の清内路の集落に入ってきた人間として、一日も早く地域に受け入れられ溶け込む為には、仕事場や作品を地域の方々に見て貰い、私という人間を少しでも理解していただく事が大事なのではと考えた事
丁度、横浜での個展の準備の為、作品の整理を追えたところで、時期的にも都合が良いと思ったこと
展示空間
自宅一階の八畳座敷 二階六畳三部屋 廊下 階段
展示物
版画作品93点 内、白黒作品17点 (11点は、15歳から16歳にかけて彫った「絵葉書・北海道」) 他に、川上澄生に捧げた「きみありてわれあり」 、また、私の最も好きな白黒作品である「窓辺のNao」 兵馬俑を描いた「二千年の孤独 1・2」の油性インクによる拓刷りのものなど。
展示された多色摺り作品76点の半数近くはもう在庫の無いもの。つまり、非売品。また、額装されたものは4点のみ。
今回のアトリエ公開は、販売を目的としたものではないのですが、展示された作品を欲しいと言う方がいた場合は、在庫がある作品に付いては勿論喜んでお売りします。
展示作品に関しては、横浜の酒井好古堂(1970年創業、日本で最も古い浮世絵専門店)で開かれる、版画制作50年を振り返る企画展と比べても質量ともに引けをとらない。
展示作品の内、版数、摺り度数の最も多いものは「落人の里」 全26版 122度摺り。また制作日数が一番かかったものは、「古都祭図」のおよそ7ヶ月。
「赤い帽子」全16版の彫り終わった版木 主版(おもはん)・・ 墨で摺られることが多いため墨版とも呼ばれる・・ 1版 (桜の版木) 色版15版 (シナベニヤ) 他に主版の無い作例として「雪椿図」全9版の版木9点(彫りかけのもの)
桜 朴 シナベニヤ の三種類の版木
「夢の舟」の摺り色見本帳 これは実際の摺りで使われた色を記録したもので、各作品ごとに作られ、次回の摺りのために保存されるもの 各版ごとに用いた顔料の名前、混ぜた割合、摺りの強さ、回数など必要な情報が色とともに書かれた物。
「赤い帽子」の墨版の転写に用いたフィルムやトレーシングペーパー、各版への色分けに用いた原稿など
道具類
彫刻刀各種(流生モデル彫刻刀を含む) サイズや材質の異なるバレン 刷毛 手ばけ ブラシなどの摺りに用いる道具類 他 絵の具や砥石など。
資料
下絵類 摺師へ渡す色つき原稿、摺色の指定書など。
プロフィール これまでの展覧会や講習会、ワークショップでの写真、ポスター 。
「北海道絵本」 更科源蔵・文 川上澄生・画 (版画家を目指すきっかけとなった本)
談話コーナー
公民館からお借りしたテーブル二つ、椅子八脚を八畳座敷に置き、コーヒー、お茶、ビールなどでおもてなし。
最後に自画自賛&不安
私自身は、「自分は日本を代表する伝統木版画家の一人である」との自負があります。(もっとも、伝統木版画をやる人間自体がきわめて少ない世界での話し) 今回はその自負に羞じない見応えのある「アトリエ公開」になるものと確信しています。
ただ、地域の各家庭に「アトリエ公開の御案内」を入れてから一週間近くになるのに、いまだに「アトリエ公開やるんですね」とか、「ちらし見たよ」とかの話しを誰からも聞かないのです。
かなり不安。
その昔、「木版画の同好会」をつくろう!」と私が呼びかけた時、その呼びかけに応じた数名のために第一回会合を我家で持つことになりました。 心を込めたもてなしの準備を済ませたその当日、ただの一人も訪れて来なかった苦い思い出が・・・頭をよぎります。
余談&期待
昨夜(26日)は、すっかり準備の終わった座敷で、セットしたテーブルで兄と二人コーヒーを飲みながら、展示されている作品をゆっくりと楽しみました。 我ながら良い展示になったなーと。 公開までまだ何日かあるのですが、新聞社の事前取材に間に合うように急いだのでした。
「アトリエ公開」の記事がきっかけとなって、この南信地域の木版画に関わる人たちと知り合えればいいなと期待しています。
当日、何人の方が見に来てくれたかは、後日必ずBBSにて報告いたします。
補足
「展示物には手を触れないようお願い致します」の貼紙をしなくては。額装されてない作品が多いのと、刃物もあり子供達が触って怪我でもしたら困るので。
当日は私は作品や技法、道具などの説明に専念するつもり。地域の来客への応対は兄が受け持ってくれる予定。
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